当院の髙倉康人 前院長につきましては,令和元年12月29日に逝去いたしました。
ここに,生前のご厚情に深謝いたしますとともに,今後も変わらぬご厚誼の程お願い申し上げます。
以前掲載されていた高倉先生のご挨拶文と,スマイル通信に掲載された先生の記事を再掲させていただきます.
地域包括ケアで,健康長寿のまちをさらに充実させたい
京都市立京北病院は,京都市右京区京北地域の地域医療の拠点として,昭和33年に国保京北病院として誕生しました。日本がこれから高度経済成長を迎えようとしていた時期です。平成17年の市町村合併により,京都市立京北病院となり,平成23年からは京都市立病院とともに地方独立行政法人京都市立病院機構として1法人2病院の運営形態となっています。
時代は今,少子高齢化社会を迎えています。医療の形も,疾患の治癒を目指すのみでなく,疾患の予防や,疾患を有しつつ住み慣れた地域での生活を継続することを,医療・福祉・行政と連携して支える「地域包括ケア」の時代に突入しています。
京都市立京北病院も,平成23年から介護療養型老人保健施設「はなふるさと」,通所リハビリテーション(デイケア)を開始,平成26年には居宅介護支援事業所の開設,平成27年から在宅療養支援病院として登録,平成29年からは地域包括ケア病床の開設,在宅医療に関しても訪問診療,訪問看護を強化し,地域包括支援センターと共同で切れ目ないサービス提供を目指しています。このような取り組みを通じて地域の皆様とのかかわりを密にし,地域包括ケアの充実を志しています。また,高度な急性期医療については,京都市立病院との緊密な連携を得て提供し,高度治療からの回復期には当院の地域包括ケア病床でリハビリテーションと多職種による退院後支援を行います。
健康長寿のまちづくりに向けて,良質で安全な医療・介護サービスを職員一同一丸となって提供していく所存であります。
京都市立京北病院長 高倉康人
2019/8
夏祭り
平成から令和へ
2019/4 スマイル通信記事
今年の5月1日に元号が平成から令和へと改元されます。京北地域には,大正生まれの方も多くいらっしゃいますが,その方にとっては3回目の改元となりますね。それぞれの方が様々な思いで,改元の時をお迎えになられることと存じます。
平成時代を振り返って,皆様どのようにお感じでしょうか。私は昭和の生まれですので,つい昭和後半と平成を比較してしまいます。私が小学生であった昭和50年ごろ,学校の先生方からは「日本が第二次世界大戦の敗戦国となり,国家の主権が一度は消失したところから立ち直って豊かになったのは,戦後に様々な形で懸命に日本を支えて下さった全ての方々の力の賜であり,祖父母,両親への感謝を忘れてはならない」と教育を受けました。そのころは,平成時代ほど便利ではありませんでしたが,何事も信じて努力すれば報われると疑わず,将来への希望に包まれていたように当時を思い出します。
時が平成に変わり,最も大きく変化したことの一つに,得られる情報量の劇的な増加があると思います。昭和時代には調べ物があったら,図書館に行くくらいしか方法がありませんでしたが,平成時代も特に後半になりますと,コンピューターやスマートフォンなどで,自宅にいて,その何百分の一以下の時間で何百倍以上もの情報を得ることが出来るようになりました。様々な事柄の舞台裏が明らかにされ,例えば多くの国民が真剣勝負と思って熱狂的に観ていたプロレスが,実は台本があり始めから勝負が決まっていたと明かされた時にはひどく落胆しました。昭和時代には何の疑いもなく信じていた多くのことの種明かしをされたのが平成時代であったように思います。サンタクロースのプレゼントをワクワクしながら待っていた子どもが,いずれ実はサンタクロースは自分の保護者であったという現実を知ってしまうのと似ていますね。
疑いなく信じるだけではいけないと明らかにされた物事の一つに医療もあると思います。医師だけを信じて全て任せるのではなく,自分の意見を多職種の医療関係者と話し合い納得行く治療を考えること,それでも納得がいかなければ他の医療機関を尋ねること(セカンドオピニオン)など,平成時代に良くなったことだと思います。
一方で,あふれる情報の中には悪質なものもあり,テレビや週刊誌,インターネット上の医療関係の情報を見て悪意を感じるものも少なくありません。無条件に信じられるものが大きく減ったのも平成時代かと思います。無邪気な子どもが青年になり,夢を追いかけていたのが,現実を冷静に見るようになり,それが行き過ぎて閉塞感や猜疑心が生まれている現実が,今あると思います。夢を持てない大人が子どもに夢を持てとは,なかなか言えず,私の主観ですが少子化の原因の一つは,この閉塞感ではないかと思います。反対に昭和時代後半には,「根拠は無いけど,頑張ったら何とかなる」という解放感があったと思い出します。
令和は,どのような時代になるのでしょうか。私は,全てを疑いなく信じて真っすぐに進んだ昭和後半から,様々な現実を知り,立ち止まって考えた平成を経て,令和は,最終的に信じあえるのは人間どうしであるとの帰結に至る,成熟した時代になってほしいと思います。簡単なことではないと思いますが,平成時代に種明かしされた物の一つである「医療」の立場から,京北病院が住民の皆様と,何でも話が出来て,職員一同が地域の中に溶け込んだ形になれるよう,努力いたしたいと存じます。
これまでにも増して様々なご意見をいただきたく思います。どうか宜しくお願い申し上げます。
2018/12
老健クリスマス会にて
新しい年が穏やかでありますように
2019/1 スマイル通信 記事
これまで,年の始め,年度の始めのご挨拶には,毎回災害のことと被災された方々へのお見舞いを申し上げてまいりましたが,平成30年ほど,多くの災害に見舞われた年は,なかったと思います。地震に始まり,酷暑,大雨,台風がいずれも過去に例を見ない激しさで私たちに襲いかかり,日常の生活に支障を来しました。ご自宅の損壊,長引く停電などに苦しまれた方,それによって体調を崩された方,本当に多かったと振り返り,お見舞い申し上げます。
災害のことを振り返りますと,当たり前の日常生活を当たり前に送ることが出来ることの幸せを,しみじみと感じます。停電から復旧した時の何とも言えない安堵感を,今も昨日のことのように思い出します。特別に喜ばしい出来事がなくて平凡でも,穏やかな日が続くことのありがたみを,昨年のような非日常の連続というストレスを通して,身に染みて感じました。今日が,昨日と同じように無事に過ぎてくれて良かったと感謝し,明日も,今日と同じように穏やかな日でありますようにと祈るようになってまいりました。
昨年は,全国自治体病院学会が福島県で開催され,出席させていただきました。平成23年の震災,津波,原発事故は,東北地方の方々にとって7年半を経過した今でも影響を及ぼしており,未だに非日常が続いていると,会場のあちこちで発表があり,これほどの長期間を非日常の中で過ごしておられる東北の皆様のことを,忘れてはいけないと思いました。そのような中でも,少しずつ日常が戻ってきており,放射線被害からの避難指示が解除された地区も増えてきているとのお話がありました。しかし,全ての年齢層の方々が故郷に戻ってこられるのではなく,避難先で就職された若い世代の方は都市部に残り,65歳以上の方々に,戻ってこられる方の比率が多いとのことでした。故郷への思い,何気ない日常に戻れる喜びが,そこにあるのだろうと共感しました。
今年は元号も平成から新しく変わりますが,日本では急激に進行する少子高齢化の中で国家の形が変わろうとしています。医療を取り巻く環境も激変しつつあり,病院の機能分担,病床数の調整が全都道府県を挙げて検討されています。当たり前だった医療・福祉の形が変わっていく可能性も少なくないと思われます。そんな中でも住み慣れた地域での穏やかな毎日を住民の皆様に過ごしていただけますように・・・
皆様には,これまで以上に様々なご意見をいただき,住民の皆様とともに京北病院が成長出来,地域住民の皆様のお手伝いができますよう努力いたしたく存じます。
2018/8
夏祭りにて
今こそ総合診療
2018/4 スマイル通信
雪の量は少なかったですが、例年になく厳しい寒さの冬が過ぎ、訪れた陽気に花々が、毎年にもまして勢いよく咲いています。新年度の始まりに、希望を感じさせてくれますね。
医療、福祉の世界にも、新たな風が吹き始めています。中でも高齢化社会を支えるために、総合診療が脚光を浴びています。75歳以上の方は、一人平均2.5の疾患を有すると言われています。従来のような臓器別に高度の医療を行う医師ばかり育成しても、多くの方の健康を守ることは難しく、逆に臓器、いや、診療科の枠さえも超えて患者さまの健康問題のお力になれる医師の育成が、有益だと認められてきています。また、単に病気の治療を行うだけでなく、全ての方が、安心して住み慣れた地域で生活できるために、地域にある福祉施設や行政の取り組みも理解し、必要なサービスを提案できる医師の必要性も認識されてきています。
平成30年度から、このような、患者さまの全身的な健康管理が出来、疾患を持ちながらも地域で自分らしい生活を送ることを支援するための、総合診療医を育成するプログラムが開始されました。これまでの臓器別医療だけでなく、全人的な幸福を支える医師を育成しようというものです。今、花々が春の陽気に活き活きと咲き始めたように、総合診療を目指す若手医師が増えてくれれば、日本の医療・福祉の将来は明るいものとなるでしょう。
京北病院で行っている診療は、総合診療の形となっており、医師それぞれが専門分野を持ちつつも、患者さまの抱える問題を可能な限り専門領域の枠を超えて対応するように努めています。また、京北地域の福祉・行政の方々に支えていただきながら、都市部では、なかなか難しい医療・福祉・行政が、お互いに良く顔が見える関係を持つことも出来ているように感じます。
京北病院には、京都市立病院や京都第二赤十字病院から、若手の先生方が研修に来られます。テレビで、若手の先生達が、難しい病気の診断をして行く番組をご覧になった方は多いと思いますが、彼ら彼女らは、そこに出演される医師に負けないような勉強をし、知識を持った先生が多く、感心することが多いです。ただし、知識を持っているだけでは、患者さまのお力になることは出来ません。スポーツに例えれば、練習でいくら上手に出来ても、試合で力が発揮できないと認めていただけないのと似ています。これからは、若くて未来ある先生方に、従来以上に病院や在宅での診療に関わってもらい、京北で総合診療の魅力を感じてほしいと思っています。
私自身も、教科書から学んだことよりも、患者さまや、そのご家族から教えていただいたことによって、育てていただいたと常々感じております。やさしい言葉だけでなく、厳しい言葉から教えていただいたことも多くあります。病院の職員一同、同じように皆様に育てていただいているのだと思います。本年度も、私共も益々努力いたしますので、「良いことは良い」「ダメなことはダメ」と気兼ねなくお声がけいただけますようお願い申し上げます。
2015/7
七夕お楽しみ会にて
行政・福祉・医療の一体化で地域を守りたい
2018/1 スマイル通信
平成30年の年頭にあたりまして,新年のご挨拶を申し上げます。平成29年を思い返しますと,いろいろなことがございましたが,特に超大型の台風21号による被害では,長時間にわたる停電のため,当院に入院,通院された患者様に暖房が行き渡らない等のご迷惑をおかけいたしました。また,停電の復旧に長時間を要した地区の方々もおられ,改めましてお見舞い申し上げます。
今でも通勤の道沿いから,沢山の大きな杉の木が,なぎ倒されたままとなっている様子を見て,自然の驚異の中では人間は小さな存在なのだなと改めて思い知らされます。その杉の木も,かつて国策として奨励されて植林されたものですが,国家の形は時代とともに変化し,現在は少子高齢化が進み,働き方改革という言葉も盛んに聞かれるようになって,福祉,医療の分野に大きな影響を与えています。
これから,日本の人口構成や疾病構造,労働力人口が,どのように変化するのか,また,変化の様相が地域ごとに異なる中で,どのように対応すべきか,難しい問題が迫ってきています。特に京北地域を含む山間へき地では,高齢化と人口減少がすでに進行しており,住み慣れた故郷で暮らし続けるための“地域力”が,今まさに問われていると感じます。
そのような中で,平成29年度からは,京北病院では由良前院長が医療政策監という,行政・福祉と医療の連携をより強化する役職に就きました。高齢化率,福祉・医療に関する資源,労働力人口には地域差があり,国主導で提案されるものが日本中の全ての地域に対して適切であることは,むしろ不可能なことと思われます。
地域に住む人々,その地域を良く知る人々が知恵を絞りあって,限りある資源や労働力を最大限有効に,かつ無駄も最小限に“ご当地のベスト”を作り上げて行くことが,急務となっていると思います。行政,福祉,医療が,別々に動くのではなく,お互いの垣根を低くして連携を強める,さらには一体化して困難に立ち向かうということは,京北という,お互いの顔の見える地域でこそ実現できるのではないかと思います。
人口減少や高齢化は自然の流れの中で,あらがえぬことなのかもしれません。大自然の前では一人一人は小さな存在ですが,知恵と力を合わせて“地域力”で困難を解決する,その一部として京北病院が力を発揮できますよう,職員一丸となって努力いたしたく思います。これまでから,地域の皆様からいただきました多様なご意見や温かいご激励のおかげで,今日の京北病院があるものと実感しております。本年もどうか宜しくお願い申し上げます。
2018/12
忘年会にて
京北の強い地域力・人間力で「住み慣れた地域での安心した生活を」支える
2017/4 スマイル通信
吹く風から棘がなくなり,陽光の温かさに春を感じる時節となりました。平成29年は1月の近年まれにみる大雪で幕を開け,雪害に苦しまれた皆様には,改めましてお見舞い申し上げます。京北病院の中庭のしだれ桜も,雪害で大きな枝が折れてしまい,春には毎年のような見事な姿を見られないのではと心配されましたが,枝にはたくさんのつぼみたちが,今まさに開こうかとしております。雪害に負けず,枝ぶりを変えながらも見事によみがえる自然のたくましさに,自分たちも勇気づけられています。
平成29年度の京都市立病院機構の人事異動にて,由良前院長は京北病院の医療政策監に昇任され,引き続き京北病院の診療体制の改善に努めつつ,京都市立病院副院長補佐を兼務され,2つの病院の関係強化にもご尽力いただくことになりました。病院長には,平成23年度から由良前院長の背中を追いかけ,京北地域の医療・福祉に携わってきました髙倉が就任いたしました。
京北病院は京北地域の身近なかかりつけ病院として,介護療養型老人保健施設「はなふるさと」開設,通所リハビリテーション(デイケア)の開始,居宅介護支援事業所の開設,在宅療養あんしん病院登録,平成29年からは地域包括ケア病床の開設などの取り組みを通して地域の皆様とのかかわりを密にして,親しみやすい病院を目指して参りました。
時代は今,未曽有の高齢化社会を迎えています。医療も,ひたすら疾患の治癒を目指すのみならず,個人が納得して住み慣れた地域で生涯を過ごすことを,病院・福祉・行政が一体となって支える「地域包括ケア」の重要性が認識されるようになってきております。テレビの特集でも,高齢者の増加,認知症の患者様の増加に,どのように対応すればよいのかと,危機感を抱かせる内容のものを以前にまして目にするようになってきています。
京北地域では,一足先に高齢化社会に相当する人口構成に移行しています。私が京北地域でこの6年間実感したことは,住民の皆様の地域力・人間力の高さで,テレビ討論等で必要とされている,「サロンでの地域交流」「近隣の住民どうしの見守り,声掛け」などが,行政・福祉のご尽力と,強い地域力・人間力によって既に機能し,病院が助けていただいているということです。
「○○さん,いつもの元気がなくおかしい」「△△さん,前に出来ていたことが出来なくなっている」などの情報を早めに得て対応させていただき重症化を防げたことを,多く経験してきました。今,なされているご尽力と,医療・福祉・行政が,よりよく連携すれば,だれもが理想とする「住み慣れた地域で安心して生活し続ける」ことが,より現実的になると思います。今まで以上に,地域のサロンに伺い,出張所にも伺い,すばらしい地域力の中に一体化することで,「日本の将来は,明るいで!」という元気を,京北から発信できますよう,京北病院一丸となって努力いたしたく存じます。皆様どうか宜しくお願い申し上げます。
糖尿病 検尿と血液検査
どちらが大切?
2011/8 スマイル通信
現在は、血糖値が
糖尿病の診断・治療の主役です
「先生、今日は私の尿糖は陰性でしたか?」「今月はこんなに努力したのに、まだ尿糖が出ていてショックでした」外来診療を行っていて、このような質問や感想をお聞きすることは、よくあります。糖尿病は、名前からして尿に糖が出る病気ですから、検尿の結果は気になりますよね。インドや中国の古い記録に、「尿がたくさん出る人の尿は甘く、犬がなめる」という内容がすでにあり、1800年代にヨーロッパでこの甘い成分が糖であると解明されています。しかし、現在では、糖尿病の診断は血液中のブドウ糖を測定して行います。一晩おいた翌朝の食前血糖が126mg/dl以上、または食後血糖200mg/dl以上が糖尿病かどうかの判定基準になります。また、糖尿病と診断され、治療が始まりますと、一晩おいた翌朝の食前血糖は130mg/dl以下、食後血糖は180mg/dl以下に抑えることが治療の目標となります。これらの目標が達成できていれば、1ヶ月間の血糖値の様子を見張ってくれるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という血液検査値が6.5%未満になってきます。このように糖尿病の状態を把握するには血液検査が主役となっており、尿糖の有無については、あまり重要ではなくなってきているのが現状です。
では、尿糖を調べることは意味がないのでしょうか?
いやいや、そうとばかりも言えないのです。一般的に検尿で検出される尿糖は、(-)、(1+)、(2+)、(3+)等と表示されます。尿糖は、通常血糖値が160-180mg/dlまで上昇すると出てきますので、たとえば糖尿病で治療中の方で、食事の後でも尿糖が(-)の場合は、血糖値が180mg/dl以下であると分かり、コントロールの状態が良いと確認できます。食後で(1+)程度なら、そんなにがっかりしなくても良い場合もあります。このあたりは、検尿の結果より、血糖値そのもので、状態の良し悪しを判断するのが実際です。逆に朝一番の尿糖が陽性であれば、いきなり血糖値が180mg/dl以上と言うことになり、要注意な状態と分かります。検尿は痛くないですし、検尿の試験紙さえあれば、自宅でもほとんどの方がチェックできます。大ざっぱな検査ですが、痛くなく簡単という利点もあり、捨てがたい所があります。
医師の立場から見た
検尿=尿糖より尿タンパク
私達は、検尿ではむしろ尿糖より、尿タンパクを注意して見ています。糖尿病の治療の目標の重要なものに、生涯にわたって腎臓の働きを悪化させない(糖尿病の合併症の腎不全を防ぐ)というものがあります。実は糖尿病による腎不全の症状として、まず一番に出現するのが尿タンパクなのです。尿タンパクが出現したあと、十年近く経過してようやく血液検査で腎機能の異常が出てきます。尿タンパクが出た時点で血糖値をさらに良くする努力に力を入れたり、血圧も含めた改善に力を入れたりすることで、腎不全の進行を食い止めることが出来ると分かってきました。
私が患者さんに「今日は尿タンパクが消えましたね!」と喜んで伝えた時に、「糖尿病の治療やのに尿タンパクって、なんでやろ?」と不思議がられることもありますが、糖尿病の診療に於いて医師にとっては尿糖より尿タンパクが重要なのです。
検尿、血液検査、
両方の長所を生かして行きましょう!
このように、血糖値の調節が上手くいっているかどうかの判断には血液検査が、腎臓の合併症が少しでも出ていないかを評価するには検尿が優れています。両方の長所を知り、現在の体調をより正確に評価して治療に役立てることが、大切です。糖尿病の治療中の方は、血糖値、HbA1cだけでなく「今日の尿タンパク、どうでした?」と、ぜひ担当医に聞いてみて下さいね。
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地方独立行政法人京都市立病院機構 京都市立京北病院
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since 2020/11/21